臨床工学室について
近年ますます高度・複雑化する医療分野において、安全かつ円滑に医療を提供するために、医学的な知識のみならず工学的な知識と技術を併せ持つ専門家として臨床工学技士は誕生し、医療機器、特に生命維持管理装置の保守点検・管理業務を行っています。
当院では、高気圧酸素治療、各種血液浄化療法、ペースメーカ埋込み時の立会いと外来チェック及び遠隔モニタリングの他、生命維持管理装置の操作、医療機器の保守管理業務などを行っています。
当院では臨床工学技士を、ME(Medical Engineer )と呼んでいます。
臨床工学技士が関わる治療について
高気圧酸素治療(一人用)
高気圧酸素療法とは
大気圧よりも高い気圧環境(2~2.8気圧)の中で100%酸素を吸入することによって血液中の酸素量を増加させ、各疾患の病態改善を図る治療です。
適応疾患
突発性難聴、網膜動脈閉塞、放射線又は抗がん剤治療と併用される悪性腫瘍、急性一酸化炭素中毒(間歇型も含む)、難治性潰瘍を伴う抹消循環不全(糖尿病性潰瘍など)、重症軟部組織感染症(ガス壊疽、壊死性筋膜炎)、骨髄炎又は放射線障害など。
突発性難聴とは
突然、左右の耳の一方(ごくまれに両方)の聞こえが悪くなる病気です。音をうまく感じ取れない難聴のうち原因がはっきりしないものの総称で、幅広い年代に起こりますが、特に働き盛りの40~60歳代に多くみられます。発症から1週間以内(治療開始が早ければ早いほど効果が得られやすいため)に治療を開始することが重要とされています。
通常突発性難聴の治療では服薬や点滴による治療を行いますが、発症からの期間や症状に応じて高気圧酸素治療を併用します。
※前兆として下記の項目がみられた後に耳が聞こえにくくなった場合には、突発性難聴が疑われます。
・耳の耳閉感(耳がつまっている感覚)がある
・聞こえがおかしい
・平衡感覚がおかしい(めまいがする)
・耳鳴りがする
・強いストレスを感じている
治療回数・金額
病気にもよりますが、1日1回程行い合計10~30回、1回あたり約9,000~10,000円程(3割負担の場合)かかります。高額療養費制度により、自己負担限度額を超えた金額が払い戻しされます(限度額適用認定証により、ひと月の支払額が自己負担限度額までとなります)。詳しくは医事課スタッフまでお問合せください。
治療の流れ
①10~15分間耳抜きを行いながら加圧
②治療時間60分間
③減圧時間15~30分間
※合計で約90~105分を要します。
治療の注意点
- 治療中は装置内と外で会話が可能です。
- 90~105分と長い治療のため、事前にトイレを済ませます。
- 加圧時には飛行機に乗った時や電車でトンネルに入った時のように鼓膜に圧力がかかり、耳に「つん」とくる圧迫感、痛みを感じることがあります。そのため加熱時には耳抜き(鼓膜の内側と外側の圧力の差をなくす方法)が必要となります。
耳抜きの方法(下記の中、ご自身にあった耳抜きを行ってください)
(1)唾液を、ごくんと飲み込む。
(2)あくびをする。
(3)鼻をつまみ唾液を、ごくんと飲み込む。
(4)鼻をつまみ、口を閉じ、耳から息をゆっくり出すようにする。
装置内部へは持ち込めないもの
- 発火源となるもの
→金属製及び使い捨てカイロ/マッチ/ライター/たばこ - 衝撃などにより火花を発するもの
→(タブレット)PC/携帯電話/ラジオ/補聴器等の電子・電気製品/ネックレス、指輪、イヤリング、ヘアピン等の装飾品/時計/ペン等 - その他
→木綿以外の衣類/湿布類、エレキバン、コルセット等の治療上必要以外の医薬品/体温計/入れ歯/眼鏡/コンタクトレンズ/書類、新聞等
(※但し、紙おむつは持ち込み可)
血液浄化療法
血液浄化療法とは
血液中の不要な物質や有害な物質、または過剰な水分などを除去し、場合によっては不足しているものを補う治療法です。血液浄化療法は、身体から血液を取り出し、浄化した後に身体に戻すといった方法で行います。
当院では下記のような各種血液浄化を実施しています。
・血液透析/持続緩徐式血液濾過透析
〔適応疾患〕腎不全、敗血症など
・吸着式血液浄化療法(薬物吸着/エンドトキシン吸着など)
〔適応疾患〕肝性昏睡、薬物中毒など
・血漿交換療法(単純血漿交換/二重濾過血漿交換/血漿吸着)
〔適応疾患〕薬物中毒、血栓性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、家族性高コレステロール血症、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎、ギラン・バレー症候群、マクログロブリン血症など
・血球成分除去療法(顆粒球除去療法GCAP)
〔適応疾患〕潰瘍性大腸炎、クローン病など
腹水濾過濃縮再静注法(CART)
CARTとは
がんや肝硬変などが原因で腹水が多く貯留してしまった患者さんの腹水を採取して、がん細胞や細菌などを除去し、アルブミンなどの有用なタンパク成分を濃縮して身体に戻す治療法です。腹部膨満感や呼吸苦などの改善・栄養状態の改善により、患者さんのQOL(生活の質)の向上が期待されています。また、ご自身の腹水のため、未知の病原因子による感染症の危険性が極めて少ないのも特徴です。
対象
がんや肝硬変などが原因で腹水が貯留しており、食事療法や薬物療法などを実施しても改善が見られない「難治性腹水」の患者さんが対象となります。
治療の流れ
当院では、下記のような流れでCARTを実施しています。